金持ちとラザロ ─ 死後に示される真実(ルカの福音書16章19-31節)

左側には、アブラハムに優しく抱かれて安らぐラザロの姿。右側には、赤い炎の中で苦しみ叫ぶ金持ちの姿。死後の慰めと苦しみの対比が静かに描かれている。 教えとたとえ話|心に届くことば

🌱はじめに

目の前の豊かさと、目に見えない永遠のいのち──イエス様はある日、「金持ちとラザロ」のたとえ話を通して、神の国とこの世の価値観の違いをやさしく、けれどもはっきりと教えられました。地上での境遇がどうであっても、神の目には人一人ひとりが大切に見られていること、そして、死後の世界における希望と警告について語られたこの箇所から、静かに心を向けてみましょう。



📝この記事を読むとわかること

  • 「金持ちとラザロ」のたとえの意味と背景
  • アブラハムのふところ(パラダイス)とハデスの違い
  • 死後のいのちに対するイエスの教え
  • 信仰の大切さと悔い改めへの招き
  • 子どもたちへのやさしいメッセージ

📖 この箇所の文脈|神の国の価値観と律法をめぐって

ルカ16章の前半(1–18節)では、「抜け目のない管理人のたとえ」を通して、この世の富をどう扱うかについての教えが語られます。そして、それに反発するパリサイ人たちに向かって、イエス様は律法の真の意味、神の御前での義とは何かを明らかにされました。

その流れの中で語られた「金持ちとラザロ」は、名前が登場する唯一の登場人物(ラザロ)を通して、単なる物語以上の重みがあります。これは単なる比喩ではなく、天と地を貫く霊的現実を私たちに静かに教えるものであり、悔い改めと信仰の重要性が深く示されています。


🖼️ 原画:『金持ちとラザロ』(らけるま作)

豪華な食卓を囲む金持ちと召使いたちの様子と、家の外で全身おできに苦しみながら物乞いをしているラザロ。その足元には犬がいて、ラザロの傷をなめている。

アブラハムのふところで穏やかに抱かれているラザロの姿と、下方の炎の中で苦しみながら叫ぶ金持ちの姿。天と地、慰めと苦しみの対比が描かれている。

🪷やさしい解説|死後のゆくえを語られたイエス様

イエス様は、「アブラハムのふところ」と「ハデス」という2つの死後の場所について語られました。これは私たちにとって、見えない世界の現実を教えてくださる、大切な警告と慰めのメッセージです。


▶「金持ちとラザロ」ルカ16:19-22

ある金持ちは贅沢な暮らしを楽しんでいましたが、その門前には全身おできに覆われ、飢えて横たわる貧しいラザロがいました。人々に見向きもされなかったラザロは、やがて死に、天使たちによってアブラハムのふところに運ばれます。そこは慰めの場所、神に愛されている者が安らぐ場所です。

一方、金持ちも死にましたが、彼が送られたのはハデス──苦しみの場所でした。地上では何不自由なく暮らしていた彼でしたが、その後のゆくえは大きく異なっていたのです。


▶「苦しみの場所ハデス」ルカ16:23-31

金持ちは炎の中で苦しみながら、遠くに見えるアブラハムとラザロに助けを求めます。しかし、アブラハムは語ります。「あなたは生前に良いものを受けた。ラザロは悪いものを受けた。今、彼は慰められ、あなたは苦しんでいる。」

そして、地上に残る自分の兄弟たちのためにラザロを遣わしてほしいと願いますが、それに対してアブラハムは、「モーセと預言者たちに耳を傾けるべきだ」と答えます。死者がよみがえっても、信じようとしない心には届かない──それは、イエスご自身の復活をも予告しているように思えます。

なお、「アブラハムのふところ」は当時、信仰者が死後に憩う慰めの場所とされていました。ここから「ハデス」にいる者と会話はできたものの、深淵の隔たりがあり、行き来はできませんでした。しかし、イエス様の十字架と復活、昇天のとき、アブラハムのふところにいた義人たちは、第三の天──すなわち「パラダイス」へと移されたと理解されています。今、信じる者が死ぬとき、すぐに主とともにいる場所がこのパラダイスなのです。


🔥 金持ちはなぜハデスに行ったのか?

ルカ16:29–31で、アブラハムはこう語っています:

「彼らにはモーセと預言者がある。それに耳を傾けるがよい。……たとい死人の中からよみがえる者があっても、聞き入れはしないであろう。」

つまり──
金持ちは、神のことば(当時はモーセ五書と預言書)を無視し、悔い改めることなく、自分の欲と富に生きたため、ハデスに送られたのです。

ハデスに行ったのは「金持ちだから」ではなく、神のことばを聞かず、心をかたくなにしていたからです。


📜 モーセと預言者とは?

この言葉は、当時の旧約聖書全体をさす表現です。

  • 「モーセ」=律法(創世記〜申命記)
  • 「預言者」=イザヤ、エレミヤなどの書

これらは神からの教えであり、「信じる」「悔い改める」ための十分な証拠でした。


✝️ 現在のわたしたちにとって「モーセと預言者」とは?

イエス様の時代以降、
神のことばの中心は「福音書」、そして新約聖書全体へと広がりました。

  • イエス様こそが律法と預言の成就(マタイ5:17)
  • 福音書は、イエスの十字架と復活という「決定的な神のことば」
  • 今の私たちには、旧約+新約=完全な聖書が与えられています

ですから、今の時代においては:

「モーセと預言者」= イエス・キリストの福音を中心とした聖書全体

と理解することができます。


🕊️ まとめると…

  • 金持ちは悔い改めなかったことが原因でハデスに行きました
  • 当時の人々は「モーセと預言者(旧約聖書)」を持っており、それを信じるべきでした
  • 現代の私たちは、イエス様の十字架と復活を記した「福音書」=新約聖書の光の中で神のことばに応答するよう招かれています

このように、旧約の時代には「モーセと預言者」に耳を傾けることが求められていましたが、今の時代、神のことばは「イエス・キリストの福音」によって完成されています。ですから、誰であっても──イエス・キリストを信じ、その十字架と復活により頼む信仰によらなければ、天の御国、すなわちパラダイスに入ることはできません。


🌼こどもたちへのメッセージ

イエスさまは、やさしくて、ほんとうのことを教えてくださいます。お金もちでも、びんぼうでも、神さまはみんなを大切にしてくださるよ。心が神さまに向いている人は、天国でやすらぎをいただけるんだよ。やさしい心で、いつもお祈りしようね。


🎚️ 弟子の告白

主よ、私は弱く、気を取られてばかりの者です。地上のことに心が傾き、ラザロのように静かにあなたを見上げる信仰を、見失ってしまうことがあります。
けれど、御国を慕い求める心をどうか失わせないでください。あなたの御声に耳を傾け、悔い改める日々を歩めますように。終わりの日に、あなたのふところで憩う者となれますように。


🖼 原画アイキャッチ情報

【代替テキスト】
1枚目:豪華な食卓を囲む金持ちと召使いたちの様子と、家の外で全身おできに苦しみながら物乞いをしているラザロ。その足元には犬がいて、ラザロの傷をなめている。
2枚目:アブラハムのふところで穏やかに抱かれているラザロの姿と、下方の炎の中で苦しみながら叫ぶ金持ちの姿。天と地、慰めと苦しみの対比が描かれている。

【キャプション】
1枚目:地上での対照的な二人――金持ちは贅沢に暮らし、ラザロは痛みと飢えの中で門の前に横たわっていました(ルカ16:19–21)。
2枚目:死後、それぞれの行き先が明らかに――ラザロは慰めに包まれ、金持ちは炎の中で叫びました(ルカ16:22–31)。

📌原画には、パブリックドメイン口語訳が含まれています。
https://j-bible.jimdofree.com/


🎨 らけるまの創作メモ|天と地、やすらぎと苦しみを描こうとした日

この原画を描くとき、私の心には「見えない世界を想う」という静かな祈りがありました。ラザロの傷と、金持ちの顔のゆがみ。その対比の中に、人の人生の重さと、神さまの正しさとあわれみが、しずかに描き出されてほしいと願いました。苦しみの炎のなかでも、神さまの言葉が届くように。そんな想いをこめました。


📝この記事のまとめ

  • 「金持ちとラザロ」は死後の真実を教えるたとえ話
  • アブラハムのふところ=慰めの場所、ハデス=苦しみの場所
  • ラザロは貧しくも神に愛された者として描かれている
  • 金持ちは地上では栄えても、悔い改めがなければ滅びに至る
  • モーセと預言者=聖書を通してすでに与えられている神のことば
  • アブラハムのふところは、イエスの昇天によって第三の天であるパラダイスに移された

🕊️ 結びの祈り

愛する主よ、地上の富や快楽に心奪われず、静かにあなたの御声に聞き従う者となれますように。
苦しみの中にある人々に、ラザロに与えられたような天の慰めが注がれますように。
信じることができないでいる心に、やわらかな光が届きますように。
あなたの憐れみとまことにより頼みながら、今日も歩ませてください。


🔔 次回の予告

次回は、「死んだラザロを生かす」(ヨハネの福音書11章1-54節)――いのちを与えるお方の力と愛に注目します。


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