🌱はじめに
夜が明ける前の静けさの中、イエスさまは偽りと怒りのただ中に立たれました。不当な証言、怒りに満ちた問いかけ、裂かれる衣――それでもイエスさまは、真理を語ることをやめられませんでした。この場面には、人の悪意と神の真実がぶつかる、深い意味が込められています。
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前回の記事「アンナスの尋問を受けるイエス」はこちらからご覧いただけます
📝この記事を読むとわかること
- カヤパと議会による不正な裁判の流れ
- イエスの沈黙と最後の告白の意味
- 絵に込められたイエスの尊厳と平和
- 弟子としての信仰の応答
📖 この箇所の文脈|夜明け前の偽りの裁判
前回は、逮捕されたイエスが最初に連れて行かれたのは大祭司カヤパのしゅうとアンナスの所でした。イエスがアンナスから尋問と役人からの平手打ちという侮辱の場面を見てきました。
今回は、アンナスがイエスをカヤパのもとに送り、サンヘドリン(ユダヤ議会)が夜明け前に裁判を行います。これは本来、律法に反する時間帯での開催であり、正当な手続きに基づかない不正な裁判でした。形式的には「宗教的裁き」でしたが、目的はイエスを死刑にすること。多くの偽証がなされ、イエスの言葉をゆがめて罪に定めようとします。
イエスは長く沈黙を守りますが、やがて「人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来る」と語ります。これはご自身がメシアであると明かす言葉でした。大祭司はこれを「神への冒涜」とし、死刑を宣告します。
🖼️ 原画:『夜明け前のカヤパと議会による裁判』(らけるま作)

🪷やさしい解説
マタイの福音書26章57節と59-68節は、イエス様が大祭司カヤパの邸宅で受けた正式な(しかし不法な)裁判の場面を描いています。
🏛️ 26章57節:カヤパへの引き渡し
- 大祭司カヤパの家へ: ゲツセマネの園で捕縛されたイエス様は、直接、大祭司カヤパのところへ連れて行かれました(57節)。カヤパは当時の正式な大祭司であり、イエス様を裁く最高議会、サンヘドリンの議長でした。律法学者たちや長老たち(サンヘドリンの構成員)もそこに集まっており、彼らはイエス様を裁き、死刑を決定する意図をすでに持っていました。
🚨 ヨハネ18章との関連性の追加
マタイはイエス様が直接カヤパのもとへ連れて行かれたように簡潔に記述していますが、ヨハネの福音書18章12-14節は、その直前の経緯を補完しています。
👉 最初の立ち寄り場所:アンナス(ヨハネ18:13-14)
捕縛されたイエス様は、まずアンナスのもとへ連れて行かれました。アンナスは、当時の大祭司カヤパのしゅうとであり、かつて大祭司の職にあったものの、実権を握り続けていた人物です。アンナスは非公式な尋問を行い(ヨハネ18:19-23)、その後、縛られたままイエス様を正式な大祭司であるカヤパのもとへ送りました(ヨハネ18:24)。
👉 権力の流れ:
- イエス様はまず、権力の中心であるアンナスに引き渡され、夜間の秘密尋問を受けました。
- その後、カヤパのもとで、サンヘドリンによる公式の裁判(マタイ26:57以降)が開始されました。
この流れは、当時のユダヤ指導者たちの間で、どのように権力と影響力が働いていたかを示しています。この集会は、イエス様の処刑という結論ありきで招集されたものでした。
🔑 権威の集中と不正な手続き
- 権威の集中: 律法学者や長老たちがカヤパの家に集結していたことは、この裁判が形式的なものではなく、ユダヤの最高権威が総力を挙げてイエス様を排除しようとしたことを示しています。
- 不正な開始: アンナスのもとでの尋問(ヨハネによる)も、カヤパのもとでのこの夜間の裁判も(マタイによる)、律法の規定に反する不当なものでした。
⚖️ 26章59-61節:偽証の試み
- 偽証人の捜索 (59節): 大祭司たちと全サンヘドリンは、イエス様を死刑にするために偽りの証拠を熱心に探しました。これは、ユダヤの律法に基づき、死刑判決を下すためには二、三人の証人の証言が必要だったからです。この行動自体が、すでに彼らが公正な裁きではなく、イエス様を亡き者にするために動いていることを示しています。
- 不一致な証言 (60節): 多くの偽証人が出てきましたが、その証言は互いに一致しませんでした。これは、彼らの主張が虚偽であることを示しています。
- 二人の証言 (61節): 最終的に、二人の証人が現れ、「この人は、わたしは神の宮を打ちこわし、三日の後に建てることができる、』と言った」と証言しました。
- 注釈: イエス様が実際に言ったのは、ヨハネの福音書2章19節にある通り、「この神殿を壊しなさい。そうすれば、わたしは三日のうちにそれを立ててみせる」という、ご自身の体を指し示す預言的な言葉でした。この証言は、言葉を曲解し、神殿破壊という重罪の根拠にしようとしたものです。
👑 26章62-66節:イエス様の告白と冒涜罪
- カヤパの問い (62-63節): イエス様が黙っていたため、カヤパは立ち上がり、最も重要で決定的な質問をしました。「あなたは神の子キリストなのかどうか、生ける神に誓ってわれわれに答えよ」
- これはイエス様に対する最大の宗教的挑発であり、イエス様を沈黙から引き出すためのものでした。
- イエス様の回答 (64節): イエス様は沈黙を破り、「あなたの言うとおりである」と、ご自身がメシアであり神の子であることを認めました。そしてさらに、ダニエル書と詩篇を引用し、「あなたがたは、間もなく、人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」と、ご自身の再臨と栄光を予告されました。
- カヤパの反応 (65節): これを聞いたカヤパは、自分の衣を引き裂き、「彼は神を汚したした」と叫びました。衣を引き裂く行為は、ユダヤ教で最も重大な冒涜の言葉を聞いたときに行われる悲嘆と怒りの表現です。
- 有罪判決 (66節): カヤパはサンヘドリンに、「あなたがたは今このけがし言を聞いた。あなたがたの意見はどうか」と尋ねました。全員が一致して、「彼は死に当るものだ」と答え、死刑判決を下しました。
- 罪状: イエス様の自己宣言(神の子、メシア)が、彼らにとっての冒涜罪(神に対する不敬)となりました。
🤜 26章67-68節:侮辱と虐待
- 暴力と侮辱 (67-68節): 死刑判決が下された後、集まった人々はイエス様の顔につばを吐きかけ、平手打ちやこぶしで打ち始めました。また、目隠しをして「キリストよ、言いあててみよ、打ったのはだれか」と嘲弄しました。
- この行為は、イエス様をメシア(預言者)として信じないことの現れであり、彼らがイエス様の主張を徹底的に拒否し侮辱したことを示しています。
🔑 主要なテーマと意義
この裁判は、イエス様の受難物語のクライマックスの一つであり、以下の重要なポイントを示しています。
- 律法の不当な使用: サンヘドリンは、真実の追究ではなく、イエス様の排除のために律法の手続きを利用しました。夜間の開廷や偽証の受け入れは、公正な裁判の原則に明確に反していました。
- イエス様のメシア宣言: イエス様は沈黙を保ちましたが、最も重要な瞬間にはご自身が神の子キリストであることを明確に証ししました。これは、ご自身がメシアであることを隠すことなく、命をかけて真実を貫いた瞬間です。
- 冒涜罪という皮肉: 人類を救うために来られた真の神の子が、人間の権威によって「神を冒涜した」という罪で死刑を宣告されるという、最大の皮肉がここにあります。
この夜間の裁判で死刑判決が下されましたが、ユダヤ人には死刑執行権がありませんでした。そのため、この後、イエス様はローマの総督ピラトのもとに引き渡される前に、正式な決定を下すために夜明け後の議会の裁判(ルカ22章66-71節)を受けます。
沈黙は、弱さではなく、深い信頼と強さのしるしです。イエスさまは、弁明せず、争わず、ただ真理の時を待っておられました。そしてそのときが来たとき、はっきりとご自身のことを語られました。
それは、ご自分を守るためではなく、すべての人の救いのためでした。この世の力が揺れ動く中でも、神のご計画は静かに、しかし確かに進められていたのです。
🌼こどもたちへのメッセージ
イエスさまは、うそをつかれても、しずかにたっておられました。そして、ほんとうのことを、ゆっくり、はっきりと、いいました。イエスさまのように、まちがったことにはこたえず、ほんとうのことをだいじにするこころを、たいせつにしたいね。
🎚️ 弟子の告白
主よ、私もあなたの弟子として、真理を語る者でありたいと願います。
世の中の声が混乱しているとき、黙るべき時と語るべき時を、あなたの御霊によって教えてください。
あなたが語られた言葉を、私も静かに信じ続けることができますように。
たとえ周りがどれほど騒がしくても、あなたのまなざしにとどまる者でいられますように。
🖼 原画アイキャッチ情報
【代替テキスト】
イエスが連行され、大祭司カヤパと長老たちが並ぶ夜明け前の議会に立たされている場面。背後には兵士と群衆が並び、カヤパは怒りの表情で衣を引き裂き、証人たちは険しい表情でイエスを見つめている。イエスは静かに立ち、答えを待つように沈黙を守っている。
【キャプション】
偽りの証言と怒号が飛び交う中、イエスは沈黙を守り、ついに真理を語られました。「あなたがたは、人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」――その言葉が、イエスの尊厳と使命を静かに照らしています。
📌原画には、パブリックドメイン口語訳が含まれています。
https://j-bible.jimdofree.com/
🎨 らけるまの創作メモ|沈黙と真理の光を描こうとした日
この原画を描くとき、「沈黙は真理の準備」であることを心に置いていました。イエスさまが声を荒げず、ただ真実を胸にたたずまれる姿に、神の静けさと強さを描きたいと思いました。正しさを叫ぶのではなく、愛をもって証しすること。それが主の道であると感じています。
📝この記事のまとめ
- イエスは夜明け前にカヤパと議会の前に立たされた
- 偽証と怒りの中でも沈黙を守られた
- 真理のときに、ご自身がメシアであることを明かされた
- それによって死刑とされ、辱めを受けた
- 原画はその静けさと尊厳の瞬間を描いている
🕊️ 結びの祈り
主よ、あなたの沈黙の中に、深い愛と真実が満ちていました。
偽りの中でも、怒りの中でも、あなたは真理を見失われませんでした。
わたしたちもまた、あなたのように、静けさのうちに真実を生きる者としてください。
読んでくださったすべての方の上に、あなたの平和と希望が満ちあふれますように。
🔔 次回の予告
次回は、「ペテロがイエスを知らないと言う」マタイの福音書26章58、69-75節。
人間の弱さと、そこに注がれる主のまなざしを見つめていきます。
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