🌱はじめに
イエスさまが捕らえられ、夜明けとともに総督ピラトのもとに連れて行かれた場面。そこには、静かに進んでゆく神のご計画と、揺れ動く人間たちの姿がありました。ローマの裁判の場に立たれたイエスさまは、何を語られたのでしょうか。今回はその対話の中にある深い真理に目を向けていきます。
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前回の記事「夜明け後の議会による裁判」はこちらからご覧いただけます
📝この記事を読むとわかること
- ピラトによるイエスへの尋問の流れ
- イエスが語られた「この世ではない国」の意味
- 「真理とは何か」という問いの重み
- 十字架への道がどのように進められていったか
📖 この箇所の文脈|ユダヤ人の法廷からローマの官邸へ
前回は、夜が明けての議会での裁判を見ていきました。そこでユダヤ人の宗教指導者たちは、イエスを死に渡そうと決意します。けれども、自分たちにはその権限がなかったため、ローマ総督ピラトのもとへ連行します。こうして、ローマによる公的な裁きが始まるのです。ピラトとイエスの対話は、単なる尋問を越えて、天と地の対話のようにも感じられます。
🖼️ 原画:『ピラトによる裁判』(らけるま作)


🪷やさしい解説
この箇所は、イエス様がユダヤの指導者たちによって逮捕され、彼らの法的な権限では死刑を執行できないため、ローマの総督ポンティオ・ピラトのもとに引き渡されるところから始まります。
1. ユダヤ人たちとピラト (28–32節)
- 場所の制約: ユダヤ人たちは、過越の食事を汚さないように、異邦人であるピラトの官邸(プラエトリウム)の中に入りませんでした。彼らは宗教的な清めを保つことを重視しましたが、その一方で、無実の人物を死に至らせようとしているという、より重大な道徳的・霊的な問題には盲目でした。
- ピラトの問いかけ: ピラトは外に出て彼らの訴えを聞き、「あなたがたは、この人に対してどんな訴えを起すのか」と問います。
- 訴えの焦点の転換: ユダヤ人たちは、当初は「彼を裁いてほしい」という曖昧な要求をしますが、ピラトが「自分たちで裁け」と言うと、自分たちには死刑の権限がないこと(31節)を認め、ローマによる処刑を求めます。ヨハネは、これはイエス様がご自身で予告された死に方(十字架刑、32節)を実現するためであったと示唆しています。
2. イエス様とピラトの対話 (33–38節)
ここが最も重要な部分であり、イエス様の王権と真理の性質が明らかにされます。
- 王権についての尋問 (33–37節)
- ピラトの問い: ピラトはイエス様を官邸に連れ込み、「あなたは、ユダヤ人の王であるか」と尋ねます(33節)。これはローマにとって反逆罪にあたる重大な問いです。
- イエス様の回答: イエス様は、この「王」という称号が、ピラト自身の理解によるものか、ユダヤ人から聞いたものかを逆に尋ねます(34節)。
- 世のものではない王権: イエス様は、ご自身の王国が「この世のものではない」と宣言されます(36節)。もし世のものであれば、ご自身の部下が戦って、ユダヤ人に引き渡されないようにしただろう、と説明されます。この世的な権力や武力に基づく王ではないことを明確に否定されています。
- 目的: しかし、イエス様はご自身が王であることを否定せず、「わたしは真理についてあかしをするために生れ、また、そのためにこの世にきた」と述べられます。ご自身の王権の目的は、真理を証しすることにあるとされます(37節)。
- 真理に属する者: イエス様は、「真理に属する者は皆、私の声を聞く」と、真理を求める者とご自身の王権を結びつけます。
- 「真理とは何か?」 (38節)
- ピラトの皮肉または諦め: ピラトはイエス様の言葉を聞き、「真理とは何か」と問います。これは深く真理を探求する問いというよりは、おそらく皮肉的、あるいは政治家としての諦めを含んだ問いかけであったと考えられます。彼は、イエス様が言うような「真理」は、政治の世界で重要視されるものではない、あるいは曖昧なものだと感じたのかもしれません。
- 無罪の宣言: ピラトは答えを待たずに外へ出て、ユダヤ人たちに「わたしには、この人になんの罪も見いだせない」と宣言します。これは、ピラトがイエス様をローマ法の下で無罪と判断したことを示します。
✝️ 四福音書すべてにおけるこの出来事の記述
イエス様がピラトのもとで裁きを受ける場面は、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネのすべてに記録されています。これは、この出来事がイエス様の受難と救いの計画において極めて重要であることを示しています。
| 福音書 | 箇所 | 主な強調点 |
| マタイ | 27:11–26 | イエス様が沈黙を守ったこと。ピラトの妻の夢、ピラトの手洗い(無罪の表明)、バラバの解放と群衆の要求。 |
| マルコ | 15:2–15 | ピラトの問いかけ(「お前がユダヤ人の王か」)に対するイエス様の簡潔な応答(「その通りだ」)。祭司長たちの扇動と群衆の要求。 |
| ルカ | 23:1–25 | ガリラヤ人という情報から、ピラトがイエス様をヘロデのもとに送ったこと。ピラトの三度の無罪宣言。 |
| ヨハネ | 18:28–19:16 | ユダヤ人の清めの問題(外に留まる)。王権の性質(「この世のものではない」)と真理に関する詳細な対話。 |
四福音書の調和と独自性
- 調和(共通点):
- イエス様がピラトの前に立たされたこと。
- ピラトがイエス様に「ユダヤ人の王」であるか尋ねたこと。
- ピラトがイエス様に罪を見出せなかったこと。
- 過越の祭りの慣例により、バラバが釈放され、イエス様が十字架につけられることになったこと。
- 独自性(ヨハネの貢献):
- ヨハネは、他の福音書が省略しているイエス様とピラトの間で行われた、信仰的・哲学的な対話を詳細に記録しています。特に、イエス様の「私の王国はこの世のものではない」という宣言と、ピラトの「真理とは何か」という問いかけは、ヨハネの福音書独自のものであり、イエス様の王権の真の性質(世俗的支配ではなく真理の支配)を深く理解する上で不可欠な情報を提供しています。
この箇所は、イエス様の究極の王権が、政治的・軍事的権力ではなく、真理に基づくものであることを示し、読者に「真理に属する者」として生きることを問いかける、非常に重要な場面と言えます。
神さまのご計画は、どんなに人の思いや策略が入り混じっても、確かに進んでいきます。
🌼こどもたちへのメッセージ
イエスさまは、どんなときも正しいこと、ほんとうのことを語りました。
イエスさまの「くには このよのものではない」と聞いたピラトは、ちょっとびっくりしたかもしれません。
わたしたちも、イエスさまのくにをしんじて、まことのことばに みみをすませて いきましょうね。
🎚️ 弟子の告白
主よ、あなたが語られた「わたしの国はこの世のものではない」という言葉に慰めと希望を覚えます。
私は弱く、ときに恐れや疑いに揺れ動きます。
でも、あなたの真理の中にとどまり、あなたの御国を待ち望む者として歩んでいきたいのです。
どうか、御言葉に耳を傾け、主の声に従うことができますように。
🖼 原画アイキャッチ情報
【代替テキスト】
1枚目:ユダヤ人たちがピラトにイエスを訴え、ピラトが階段の上から見下ろしている場面。
2枚目:イエスとピラトが向かい合って対話している場面。
【キャプション】
1枚目:ユダヤ人たちは過越の食事を守ろうとしながら、イエスを死に渡そうとします。ピラトの官邸の前で、沈黙のうちに裁きが始まろうとしています。
2枚目:イエスは静かに「この世ではない国」について語られました。ピラトの問いは、やがて「真理とは何か」という永遠の問いへとつながっていきます。
📌原画には、パブリックドメイン口語訳が含まれています。
https://j-bible.jimdofree.com/
🎨 らけるまの創作メモ|対話の静けさを描こうとした日
この原画を描いた日、私は「言葉の重み」と「沈黙の力」について考えていました。
ピラトとイエスが対話する場面は、どこかとても静かで、しかし深く心を揺さぶる場面です。
この静けさの中に、神さまの真理が語られ、照らされていくようすを描きたいと思いました。
イエスさまのまなざしが、読む人の心にも優しく届きますように。
📝この記事のまとめ
- ユダヤ人たちはイエスをピラトのもとに連れて行った
- ピラトはイエスに「ユダヤ人の王か」と問いかけた
- イエスは「わたしの国はこの世のものではない」と答えた
- ピラトは「真理とは何か」と問いつつ、イエスに罪を見出せなかった
- 神のご計画は静かに、しかし確かに進んでいた
🕊️ 結びの祈り
主イエスさま、あなたが沈黙の中でも真理を語られたことを、心から感謝します。
この世の力にではなく、天の御国に望みをおいて歩めるように、私たちの心を導いてください。
読んでくださった一人ひとりの上に、真理と平安が豊かにありますように。
どうか、あなたの愛と光が、今日も私たちの歩みに伴ってくださいますように。
🔔 次回の予告
次回は、「ヘロデによる裁判」――ルカの福音書23章6-12節に移ります。
権力者たちの思惑の中でも、神の御手は静かに働いておられます。
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